|
肉・魚・豆・タマゴ・キノコに含有するタンパク質は胃でペプチドに寸断され、十二指腸に送られてトリペプチド(3個結合のアミノ酸)になり、続いてジペプチド(2個結合のアミノ酸)に分解され、最後に小腸で1個単体の遊離アミノ酸になる。
これら遊離アミノ酸は、300以上もの酵素を構成したり酵素生成に関与し、さらに、タンニンと結合して腸粘液を生成したり微絨毛の表面で終末消化酵素を形成して有用な栄養成分を捕まえ、血液へと取り込む活動をする。この消化酵素による働きで水分や栄養成分が身体に吸収されるが、問題は、肉や魚から遊離アミノ酸に至るまでにいろんな過程を経て長い時間がかかることである。したがって、酵素として形成されるのはごくわずかしかないから、何かの障害があれば必ず不活(酵素が欠乏)してしまう。
エンドルフィンという注目の物質も、これらの酵素が介在して小腸で生成され脳下垂体に貯蔵される。苦痛やストレスを感知すると分泌される神経伝達物質であり、その働きから「脳内モルヒネ」と呼ばれ、実際のモルヒネ(鎮痛薬)の6~7倍の鎮痛作用を持つといわれる。
その一つ、β-エンドルフィンは特に鎮痛・鎮静・免疫効果、免疫細胞の防衛反応を強化する働きが特性がある。アミノ酸成分のうちの遊離アスパラギン酸や遊離グルタミン酸を原料として生成されるが、激痛や過酷なストレスを感じると、その箇所の細胞に付随するオピオイド受容体(モルヒネまたはエンドルフィンが結合すると鎮痛作用を発揮する)に接触することによって、痛みやストレスから解放されるという仕組みである。
エンドルフィンは癌細胞を消滅させる免疫システムにも大きく関与している。体内に侵入する異物や体内に発生する癌細胞を攻撃するキラーT細胞や貪食細胞(癌細胞を食べる)には、エンドルフィンを繋ぎとめる受容体(電気のコンセントのようなもの)を持っているため、エンドルフィンが分泌されることによってこれら免疫細胞が一気に活性化して癌細胞を消滅させてしまう。
エンドルフィンの生成については前述の通りだが、癌罹患者の場合は医師からタンパク質制限を受けたり、医薬の経口投与の影響で腸内細菌が減少して終末消化酵素の生成が減退する。これによって、エンドルフィンが不活に(活動が悪く)なるから、必然的に癌罹患者の免疫機能が低下することになる。
冬虫夏草は16種類の遊離アミノ酸を豊富に含有する。なかでもエンドルフィン生成の主原料となる遊離グルタミン酸と遊離アスパラギン酸がきわめて豊富(下表)なため、容易かつ迅速なエンドルフィン生成が可能となり、このことから、酵素の不活をカバーする食材といえる。
脳内には、エンドルフィン効果を助長するドーパミンやセロトニンという快適ホルモンの存在がある。ドーパミンは、交感神経節や副腎髄質に含まれるホルモンで、アミノ酸のなかの遊離フェニルアラニンや遊離チロシンから、体内酵素の働きによって合成される。
セロトニンは遊離トリプトファンを原料として、体内酵素の働きによって形成される。これらのアミノ酸は、冬虫夏草に豊富に含まれる。
ドーパミンやセロトニンが脳内に増えてくると、睡眠や体温調節などの生体リズムを改善し、うつ病や神経失調症、薬物依存症を克服することができる。ほかにも、パーキンソン病やメニエール病を好転させ、拒食症や過食症などの異常食欲を制御したり、ホルモン分泌を制御して精神を安定させる(ホルモンバランスの改善)という生体反応がある。
このように、精神的に安定することからエンドルフィンの生成と分泌が活発になって、免疫システムが正常に機能して、癌細胞が阻害されることになる。 |